風信帖


平成19ǯ10月05日 [長年日記]

_ [死生] 呑み会でのこと

 自分に影響を与えた本という話になった。僕のそれは、手塚治虫の 『火の鳥』なのであるが、それは丁度、祖父がこの世を去り、 「死」を現実的に考えるようになったものの、まったく想像の出来ない その先の闇に捕らわれていたときに出会った、衝撃の一冊だった。

 そんなことを話していたら、祖父の最期を事細かに思い出した。

 子ども三人を残して、夜、父母と祖母が病院に行った次の朝、母は僕を 起こして言った。

 「いいちゃん、帰って来たよ」

 何ヶ月も入院していて、お見舞いにも連れていって貰えず、ずっと 会いたくて会えなかった祖父が帰って来たと聞いて、僕は喜んだが、 目を開けて母の顔を見た瞬間、僕はその言葉の意味を悟って、凍りついた。 まだ、感情は動いていなかった。

 そんなことを思い出したら、目の奥に涙が溜まった。僕はじっと、 堪えた。


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昔のかきこみ